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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.26 (2010年6月公開)

  • スポーツ関連
  • 専門学校トライデント
トヨタ自動車ラグビー部 トレーナー 南里 重章さん

専門性の向上をめざして<br />「アスレティックトレーナー専攻」と<br />「はり・きゅう学科」の2つの学科を卒業<br />トップ選手と関わり続けるために<br />現在も常に自己研鑽を心がけています

  • トヨタ自動車株式会社
    ラグビー部 ヴェルブリッツ トレーナー

    南里 重章さん

    出身コース
    トライデントスポーツ医療看護専門学校

膝の手術を乗り越えてサッカーを続けた経験を生かしたい

・・トレーナーの仕事に興味を持つようになったきっかけは何ですか。

中学、高校とサッカー部に所属しており、高校時代には控えのゴールキーパーとしてインターハイにも出場しました。けれども、順風満帆の競技生活だったわけではありません。中学1年生の試合中に、もともと痛めていた膝の状態が悪化し、立つことも歩くこともできなくなってしまいました。診断結果は半月板の損傷で、手術を余儀なくされました。競技復帰までに約3カ月を要したのですが、その際、理学療法士やトレーナーの先生方にとてもお世話になりました。高校2~3年生になって、卒業後の進路を決める時期に、その当時のことを思い出し、膝の手術を乗り越えて、競技を続けてこられたのは、あの先生方のおかげだったと、改めて感謝の気持ちが生まれました。自分の周りには、中学・高校時代にケガをしたために、競技をあきらめてしまう選手もいたからです。その経験を踏まえて、同じような立場の選手をサポートする仕事に携わりたいと考えたのです。

・・トライデントスポーツ健康科学専門学校を選ばれた理由を教えてください。

母校(愛知県立松蔭高校)のサッカー部のトレーナーをされていたのが、トライデントの先生でした。その先生は、常に選手のことを第一に考えて、自分の時間を削ってでも、頻繁にグラウンドを訪れ、選手の身体のケアをされていました。その熱意あふれる姿に憧れて、この先生にぜひ教えを請いたいという意欲が高まり、トライデントのスポーツ科学学科(現・プロフェッショナルトレーナー学科)アスレティックトレーナー専攻に入学しました。私にとって、この先生にめぐり合えたことは幸運でした。入学後も親身に相談に応じてくださり、時には挫折しそうになる私を励ましてくださいました。先生との出会いがなかったら、まったく違う分野に進んでいたかもしれません。

・・アスレティックトレーナー専攻時代の思い出をお聞かせください。

サッカーの日本代表や大リーグのトレーナーを務めた先生をはじめとして、多彩な経歴を有する先生方が揃っていました。そのため、授業は現場実習を基盤とした、きわめて実践的な内容になっていました。もちろん、資格取得に向けた教育も充実しており、卒業後に、(財)日本体育協会が公認するアスレティックトレーナーの資格を取得することができました。

・・在学中に最も力を入れたことは何ですか。

時間の許す限り、サッカー、野球、テニスなど、できるだけ数多くのスポーツ現場に足を運ぶようにしていました。将来、トレーナーとして働く上で、さまざまな競技の特徴を把握しておくことが重要だと考えたからです。しかも、各会場では、単に試合を観戦するだけではなく、トライデントの先生方が担当されているチームなどで、アイシング用の氷を作ったり、テーピングの補助をしたりなど、トレーナーのサポート業務も経験することができました。それも、トライデントの先生方が、さまざまなスポーツ現場で実際に活躍されていたからこそ可能になったことです。現場の生の雰囲気に接することができ、とても充実した日々でした。

基礎医学の知識を深めるために、はり・きゅう学科に再入学

・・アスレティックトレーナー専攻を卒業してすぐに、はり・きゅう学科に再入学されていますね。

自分がサッカーをやっていたこともあって、チームスポーツに魅力を感じていました。さまざまなスポーツ現場で経験を積む中で、その気持ちはさらに強くなっていったのですが、チームの専属トレーナーとして採用されるには、実力が不足していることも自覚していました。とくに、基礎医学に関する知識不足を痛感しており、その分野をもっと深めるために、はり・きゅう学科に再入学しました。スポーツ現場で、私が思っていた以上に、はり治療を望む選手が多いことを知ったことも、志望理由の1つです。

・・基礎医学系の知識が重要だと考えたのは、身体の構造、仕組みを理解した上で治療することが大切になるからですか。

その通りです。たとえば、基本的なテーピングの方法論は、市販されている本でも学ぶことができるでしょう。けれども、実際には、身体の部位によって、テーピングの方法は異なります。身体の仕組みを理解していなければ、最も効果的な巻き方にはならないのです。はり・きゅう学科では、解剖学、運動生理学など、基礎医学系の授業が充実しており、貪欲に知識を吸収するように努めました。

また、授業に出席するとともに、午後はトライデント内に設置されているスポーツケアセンターで、インターンとしての研修も積みました。

すべての部位に外傷が発生するラグビーでは高い専門性が要求される

・・現在、トヨタ自動車ラグビー部「ヴェルブリッツ」のトレーナーとして活躍されています。入社に至る経緯を教えてください。

私は、チームスポーツの中でも、できればラグビーか、アメリカンフットボールのチームの専属トレーナーになりたいと希望していました。スポーツケアセンターで教えていただいた先生が、トヨタのトレーナーをされていました。その先生に相談したことを契機に、ご縁があって幸運にもチームで働けることになりました。

・・なぜラグビーかアメリカンフットボールのチームのトレーナーになりたいと思っていたのですか。

たとえば、サッカーなら足回りのケガが中心になるなど、ほとんどのスポーツは、ケガが発症するのは特定の部位に偏重しています。けれども、この2つのスポーツは、コンタクトスポーツなので、必然的に外傷が多くなりますし、頭から爪先まで、どの部位にも外傷が発生する可能性があります。当然、トレーナーの重要度も高く、専門性も要求されます。トライデントで学んだ基礎医学と、スポーツケアセンターなど経験を生かして、多様な部位のケアに携わりたい。それが自分のさらなるスキルアップにもつながるはずだと考えたのです。

・・現在の主な仕事の内容は何ですか。

春夏は体力強化、シーズン中は試合に向けての調整と、時期によってテーマが違うため、トレーナーに求められる役割も異なります。大まかな1日の流れとしては、まず、練習開始前に、テーピングや治療の準備をして、ケガをしている選手がきたら、その状態を確認し、テーピングなどの処置を施します。練習開始後は、グラウンドワークが始まります。救急時の対応を中心に、ケガのために別メニューで練習している選手のリハビリテーションの支援も行います。練習後は、その日の練習でケガをした選手と、慢性的な疾患を抱えている選手のケアに当たります。そうしたケアの際、アスレティックトレーナーと、はり師・きゅう師の両方の資格を取得している点が強みになっています。選手個々のケガの原因や状態、身体の特徴にあわせて、運動療法、鍼灸、マッサージなど、多様な手法を組み合わせて、柔軟に対応することができるわけです。

・・どんなところにやり甲斐を感じていますか。

ラグビーはチームスポーツですから、やはり選手のため、チームのために、自分の能力を最大限に発揮しようという姿勢が大切になります。その結果として勝利に結びつくことが一番の喜びですし、そこに自分の存在価値があると感じています。

選手と同等の努力ができないようでは同じ場にいる資格がない

・・現在の仕事に、トライデントで学んだことが役立っていると感じられることはありますか。

理論と実践を融合させた学びが、とても有意義だったと思います。とくに、はり・きゅう学科に在学中の3年間は、スポーツケアセンターにおける研修のなかで自分に不足していると感じた知識を補完するために、授業を受講するといった意識が強かったですね。私は実践のなかで、どういった分野の知識が必要となるのかを体感することができました。そのため、授業ではその必要性を感じた上で受講することとなり、学びのモチベーションも高く、知識が着実に浸透していった感じです。

結果として、トレーナーとして働き始めるまでに6年間を要し、学費などの面では両親に負担をかけてしまいましたが、私にとっては、目標を実現するために6年間が必要不可欠な時間だったと思います。私のことを温かく見守り、やりたいことを打ち込める環境を作ってくれた両親に感謝しています。

・・今後の目標をお聞かせください。

まだ20代なので、体力の続く限りチームスポーツに携わっていきたいですね。日本国内だけでなく、チャンスがあれば海外のチームで活動することも目標としています。

さらに、将来的には、トレーナーの普及・育成に貢献することが目標です。トレーナーの認知度は少しずつ高まっていますが、専属トレーナーを受け入れているチームは、トップレベルのごくひと握りです。今後、われわれアスレティックトレーナーが活躍できる環境を拡大していくことが課題となります。そのためには、システム整備も重要ですが、まずは各々が技量を高め、技術・能力の水準を高めていくことが大切なポイントとなると考えています。また、後進の育成も責務であると考えます。もちろん、その目標を実現するには、まだまだ能力不足ですので、私自身がさらにスキルアップを図る必要があります。今はまだ日々勉強ですね。

・・最後に、後輩に向けてのメッセージをお願いします。

トレーナーをめざす場合の心構えとして、大前提になるのが、スポーツが好きだということ。それに加えて、選手のために何かをしたいという気持ちがあるかどうかがカギを握ります。私たちトップレベルのチームスポーツのトレーナーが関わる選手たちは、そのスポーツの選ばれたエリートです。そのレベルまで到達した選手は、日頃から、もっと上手になりたい、もっと強くなりたいという強烈な向上心を持って練習しています。自分のどこに課題があり、その解決のために何が必要か、常に考え続けています。そういう意識がないと脱落してしまう厳しい世界でもあるのです。そんな選手たちと関わるには、私たちトレーナーにも常に自己研鑽を続ける姿勢が要求されます。

・・南里さんも、未だに勉強を続けていらっしゃるのですか。

もちろんです。トレーナーには高い専門性が求められると自覚していますから、医学、スポーツ科学の最先端の情報を収集するように心がけています。特定の外傷に関する新しい治療法、あるいは解剖学やリハビリテーションをテーマにしたものなど、できるだけさまざまな勉強会にも参加するようにしています。さらに、われわれラグビー部を日頃から支えていただいているチームドクターや理学療法士の先生方と症例についてディスカッションしたり、リハビリテーションの研修をさせていただくなど、できるだけ自己研鑽の機会を増やすように努めています。チームスポーツのトレーナーである以上、選手と同等以上の努力ができないようでは、同じ場にいる資格がないと肝に銘じています。今後も自己研鑽を怠らず、学び続ける姿勢を大事にしたいと考えています。

Profile

南里 重章 (Shigeaki Nanri)

南里 重章(Shigeaki Nanri)

1983年愛知県生まれ。愛知県立松蔭高校を卒業後、2002年河合塾学園トライデント健康科学専門学校スポーツ科学学科(現トライデントスポーツ医療看護専門学校プロフェッショナルトレーナー学科)のアスレティックトレーナー専攻に入学。同専攻卒業後、2006年同校のはり・きゅう学科に再入学。基礎医学などを学びながら、トライデント内に設置されているスポーツケアセンターで、インターンとして研修を積む。2008年トヨタ自動車ラグビー部「ヴェルブリッツ」に就職。専属トレーナーとして、怪我の処置や治療、リハビリテーション補助、コンディショニングなどで選手をサポートしている。

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