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河合塾フォーカス

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~大学全入時代到来?人気の学部や入試形態の変化にも注目~|18|親子のギャップを乗り越えよう!30年でこんなに変わる大学入試

親と子の大学受験を取り巻く環境には、大きな世代間ギャップがあります。今回は、受験生を持つ保護者へ、変化する大学受験と円満な親子関係を築くヒントを2回に渡ってご紹介します。2023年03月10日公開 

少子化の影響により、大学志願者数が大学入学定員を下回り「選ばなければ」誰もが大学に入学できる「大学全入時代」が訪れようとしています。一方、現受験者の保護者の方は、80~90年代の大学受験の激戦時代を乗り越えた世代。親と子の大学受験を取り巻く環境には、大きな世代間ギャップがあります。
前半は「変化する大学受験」について、少子化が大学進学にどのような影響を及ぼしているのか、また、大学の学部や入試形態の変化について解説します。学校法人河合塾 教育研究開発本部 主席研究員の近藤治に聞きました。

【18歳人口と大学志願者の変化】大学入試は広き門に

受験環境の変化

■今の受験環境は、保護者が受験していた頃と比べてどのように違うのでしょうか?

近藤さん:現役受験生世代と保護者世代を実際に数値で比較します。現役世代は2022年、保護者世代は1992年を代表に、この30年を比べてみます。

1992年度入試は、過去50年をみても、18歳人口が最も多かった年です。
高校卒業者でみると1992年は約180万7千人、22年は約99万5千人で55.1%と半減しました。これは少子化による18歳人口の減少によるものです。
次に現役大学志願者数は約64万1千人から約60万人とさほど減少していません。これは大学を進学希望する者の割合が大きく増えたからです。実際に、現役大学志願率は92年が35.5%、22年は60.3%です。
一方、学生を受け入れる大学ですが、4年制大学は1992年が528校でしたが、2022年は804校と1.5倍に増えています。
入学定員も同様に、約47万3千人から約62万7千人と約15万4千人増加しています。

■大学への進学者数はどう変わったのでしょうか?

近藤さん:1992年の現役大学進学率(高校を卒業してストレートで大学に進学した生徒の割合)は19.2%、22年は55.3%と、大きく変化しています。
かつては大学生になることは珍しく、受験競争に打ち勝ったエリートと呼ばれる存在であったのに対し、現代は、半数以上が大学生になる時代ですから、大学生自体は珍しくない存在であるということです。ちなみに、現役入学率(大学受験者のうち浪人せずに大学に入学した生徒の割合)は54.2%から91.8%に上昇しました。
現在の大学入試は30年前と比較すると数値上はかなり広き門となりました。連動して入試難易度(偏差値)も下がってきています。
当然、親子間で、入試に対する捉え方のギャップも感じやすくなります。

【学部の変化】漢字1文字→ひらがな、カタカナ名称に

■学部系統から見られる変化はありますか?

近藤さん:1990年代は、法学・文学・医学・工学・農学など漢字一文字で表現できるようなシンプルな名称の学部が多く見られますが、現代では、それに加え、ひらがなやカタカナ名称など多種多様な学部が増えています。たとえば、2010年代には、キャリアデザイン・こどもといった学部が目立ちました。
ここ5年位はDX化など世の中の変化もあり、デジタル・IT人材の育成を目的に「情報・データサイエンス系」の新設ラッシュが目立ちます。また、昨今のSDGs教育などを受けて「農・環境系」も人気です。今後も時代の要請に合わせて新しい学部が新設されるなど対応がなされていくでしょう。

【入試形態の変化】推薦や総合型など年内入試が大幅に増加

大学入試の種類

■入試形態から見られる変化はありますか?

近藤さん:90年代にはAO入試という新しい選抜方法が出始めます。慶應義塾大学のSFC(総合政策学部・環境情報学部)がその代表例ですが、実際に利用する人はまだまだ少ない状況でした。
昨今は、私立大学の入学者のおよそ半数が、学校推薦型選抜や総合型選抜といった年内入試で合格を決めている状況です。国公立大学ではまだ一般入試(1月に共通テストを受験・2月に2次試験を受験)の流れが主流ですが、推薦や総合型での合格者も徐々に増えてきています。
国公立大・私立大にかかわらず、年内入試のなかでも「総合型選抜」の増加割合が大きくなってきています。
最近では、生徒以上に、保護者が「年内入試で合格して進学先を早めに決めたい」と考えることが多くなってきたように感じます。世代としても受験戦争が最も激しかった時代の経験者ですから、そう思われるのも当然のことです。
ただ「2月まで数か月頑張れば、第一志望に手が届く」と思われる生徒でも、年内で受験勉強を終えてしまうのはもったいない印象があるのも事実です。

【社会に求められる力の変化】ジグゾーパズル型からレゴブロック型へ

今までと未来

■求められる力の変化はありますか?

近藤さん:戦後の発展に寄与した工業社会では、良いものを速く大量に生産する必要がありました。そのため、社会では決められたことを「速く」行う力・「正確」に行う力・マニュアルや設計図を忠実に「再現する」力が求められました。
大学入試でいえば、共通一次試験やセンター試験に代表するように「正解主義型」といっても良いかもしれません。ジグソーパズルをあてはめていくようなイメージです。1つの正解があるなかでは速く解答できることが評価につながります。こうしたタイプの入試では、多くの知識を暗記し、公式にあてはめて処理していく方が有利です。じっくり思考して新しい解を考えていたのでは時間が足りず、不合格になってしまいます。
一方で、不確実性の高い現代社会においては、「新しい価値を創造する」力や、「周囲を巻き込む」力、「自らのキャリアを切り拓く」力などが求められます。日常にある課題を自ら発見し、仮説を立てる。一人では解決できない課題を他者と協働しながら、適切な情報をもとに思考し、判断する。
前者のジグソーパズルに対して、後者はレゴブロックのイメージに近いかもしれません。一人ひとりが異なる色や形で立体物をつくりあげるようなイメージで「構想力型」といえると思います。
総合型選抜にみられるような、志望理由書・面談・小論文やプレゼンテーションといった選抜方法も、構想力型といえるでしょう。

●第2回(後半パート)に続きます。

【プロフィール】
近藤 治(こんどう おさむ)
学校法人河合塾 教育研究開発本部 主席研究員 
河合塾入塾後、大学入試動向分析を担当し受験生への情報発信を行う。2018年より中部本部長として塾生指導に携わった後、2022年より現職。マスコミへの情報発信や生徒、保護者、高校教員対象の講演も多数実施。