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河合塾フォーカス

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~自分の可能性が広がる大学を選ぼう!~|19|親子のギャップを乗り越えよう!―大学選びのポイント―

親と子の大学受験を取り巻く環境には、大きな世代間ギャップがあります。今回は、受験生を持つ保護者へ、変化する大学受験と円満な親子関係を築くヒントを2回に渡ってご紹介します。2023年03月17日公開

少子化の影響により、大学志願者数が大学入学定員を下回り、「選ばなければ」誰もが大学に入学できる「大学全入時代」が訪れようとしています。一方、現受験者の保護者の方は、80~90年代の大学受験の激戦時代を乗り越えた世代。親と子の大学受験を取り巻く環境には、大きな世代間ギャップがあります。
後半は「大学入試の変化」から、具体的にどのように対策すべきか、またどのような観点で大学選びを行うべきかについてお伝えします。引き続き学校法人河合塾 教育研究開発本部 主席研究員の近藤治に聞きました。

【これからの学力】大学入学後を見据えて科目を選択

これからの学力

■まずはどこから手を付ければ良いでしょうか?

近藤さん:これまでの知識・技能を問う、勉強したものを再現することから、さらにそれらを活用して第三者に伝える表現力が新しい入試では問われます。
たとえば、共通テストや一般入試でも日常に起きうる場面設定で、周囲の意見を的確に捉え、自分の意見を表現させるような問題傾向が見られます。
加えて、主体性や協働性といった力が求められますが、ペーパーテストだけで測るのは大変なことです。そうした力を多面的に評価する意味で、各大学は総合型選抜枠を増やす・一般入試に加えて小論文や面接を課すなどさまざまな工夫をしているのです。
ただし、これらは確かな知識・技能と、それらを活用する思考力・判断力・表現力があってこそ。すべてはピラミッドのように積み重ねられるので、まずは地道に基礎を固める必要があります。

■文理選択についてはどう考えればよいでしょうか?

近藤さん:近年は文理融合型の大学が増えてきています。一橋大学のソーシャルデータサイエンス学部のように、文系理系関係なく選抜をする大学が新設の学部では増えてきています。科目の好き嫌いで文理選択をする考え方はできれば避けたいところ。よほどの場合を除いては、できるだけ最初から切り捨てずに幅広く勉強をしておいた方が良いと思います。
また、一部の大学では、一般入試で課す科目に、これまでとは異なる変化が見られます。
これまでは私立大や国公立大二次試験の入試では、理系学部では「国語」を課さない、文系学部では「数学」を課さない大学がほとんどでした。
しかし、早稲田大学の政治経済学部が数学を必須化したり、名古屋大学の理系学部で国語を課したように、大学入学後、その分野を学ぶのに必要な科目について入試でも課す大学が出てきています。
受験生は大変ですが、考えてみれば、経済を学ぶのに数学の知識は必要になりますし、理系学部へ進学しても論文を正確に読み、自身でも書く力は必ず必要になります。
これは大学側から「大学入学後を見据えて、学びを継続できる人材を求める」というメッセージでもあります。

【大学選びのポイント】将来を見据えて選ぼう!

■今後の大学選びにはどんな要素を重要視すべきでしょうか?

近藤さん:ずいぶん前から大学に行ったからといって人生安泰という時代ではなくなっています。社会では大学を卒業しただけではなく「何を勉強し、どう成長したのか?」を求められます。大学合格はあくまで通過点に過ぎず、その先の将来を見据えて選択をすべきだと考えます。そのためには、入学の入口の偏差値ではなく、入学後に「学生を育てようとしてくれるかどうか」が重要な指標といえるでしょう。


■具体的にはどこを見ればよいでしょうか?

近藤さん:まずは気になった大学を調べる際に、各大学のHPに掲載されているアドミッションポリシーやカリキュラムポリシーをご確認ください。学部がいくつもあるにも関わらず、すべてひとまとめに記載している大学はお勧めしません。学部・学科・専攻ごとにポリシーがあって、求める学生像をしっかり描いていることや、だからこそこうした選抜を行っている、といったように、1つずつわかりやすく書いてくれている大学は、上記の「学生をどう育てようとしているか」の観点からみても信頼できそうだと思います。
また、卒業後の進路を細やかに追跡できている大学は、就職サポートが手厚そうだといえます。入口だけでなく出口まで見ておけると理想の大学に出会えそうです。

【第一志望合格をめざす】保護者の心得とは?

親子の関係

■保護者は子の大学受験について、どのように心得ておくべきでしょうか?

近藤さん:子どもの性格や勉強の進み具合、これまでの親子の関係性にも因りますが、本来は、本人に任せて必要な部分にだけ関与する方が良いでしょう。かといってほったらかしもあまり良くないのでバランスが重要です。理想のパターンとして「お釈迦様型」を挙げます。孫悟空とお釈迦様のような関係で、必要なときはびしっと言うこともあるけれど、基本は事細かには口を出さず、温かく見守る姿勢が理想です。とはいえ、なかなか難しいですね。細かく関与するなら徹底的に関与する「伴走型」も手です。この場合は、受験校選びから本人とたくさん話し合う必要があります。エクセルシートで細かく受験スケジュールをつくってあげている保護者の方もいますが、それで勉強に身が入り、親子で良い関係を保てているのであれば、そこまで関与しても問題ないのだと思います。なるべく避けたいのは、まったく関与しない「放任型」。子どもがどういう将来を描こうとしているか知らない、また学校の先生と連携を取ろうとしない、などの場合、自走できる生徒ならうまくいきますが、それ以外はまったくうまくかないパターンに陥りやすいです。さらに1番良くないパターンは、「直前半狂乱型」。当初は本人に任せると言って放置していたのに、直前になって豹変したように「だからだめだと思った」「なんでこの学部にしたのか」などと、追い詰めるパターンですね。上記はあくまで一例ですが、ぜひ保護者の方には「お子さんの可能性を最後まで信じてあげてください」と伝えたいです。

大学は人生の通過点

■最後にこれから受験する中高校生の保護者へメッセージをお願いします。

近藤さん:繰り返しになりますが、大学に合格すること、入学することは、人生の目的でも目標でもありません。
ぜひ大学は人生の通過点と考え、可能性が広がる・自分の夢を見つけられるような経験・体験を増やしたり、未来について家族で話し合う機会を持ってほしいと願います。大人になってから、もっと勉強しておけばよかったと感じることは少なくないでしょう。勉強を先行投資することで、将来の役に立つものと伝えていくことが我々大人の役割ですね。



【プロフィール】 
近藤 治(こんどう おさむ)
学校法人河合塾 教育研究開発本部 主席研究員 
河合塾入塾後、大学入試動向分析を担当し受験生への情報発信を行う。2018年より中部本部長として塾生指導に携わった後、2022年より現職。マスコミへの情報発信や生徒、保護者、高校教員対象の講演も多数実施。