「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.96 (2017年10月2日公開)
- 教育・研究者
- 高校グリーンコース
受験勉強で最も大切なのは<br />思考のパターンを身につけること。<br />それが人生のあらゆる局面で求められる<br />問題解決への第一歩になる。
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明治大学
准教授飯田 泰之さん
- 出身コース
- 高校グリーンコース
極端な勉強法に走らず、地道な学習を積み重ねることが大切
・・河合塾に通うようになったきっかけは何ですか。
海城中学に入学した当初はトップクラスの成績だったのですが、勉強を怠けて、高2後半の成績は下位に低迷していました。最後の1年間は真剣に頑張ろうと決意し、予備校に通うことにしました。学力を伸ばすには、高い目標を設定した方がいいと考え、河合塾高校グリーンコースで東大コースの講座を受講しました。河合塾を選んだのは、バランスのとれた教育が行われていると感じたからです。ダイエット法と同じで、勉強法も極端なものの方が注目を集めがちです。けれども、たとえば「英語の例文を1,000覚える」といった勉強法が、すべての受験生に効果的なわけではありません。基礎を固めて、授業の予習・復習をして、模試を受けて、過去問を研究する地道な学習を積み重ねるしかないのです。河合塾にはそうした地に足のついた教育を大切にしている印象がありました。
東大の特殊な出題傾向に対応した授業
・・印象に残っている授業はありますか。
東大の日本史、世界史は特殊な問題が出題されます。その対策指導が最も充実しているのは河合塾という定評がありました。たとえば日本史では絵巻物などの史料をもとに400~600字の小論文を書く問題が出されます。細かな知識を詰め込む勉強では通用しません。河合塾では「史料は何時代のものか」→「その時代にどんな出来事が起こったか」→「史料と関連のある出来事は何か、まず政治から検討し、該当しなければ経済、文化と分野を広げて考える」→「解答は最初に該当する出来事について解説し、次に史料との関連、最後にその後の時代の動きを記述する」といった問題への具体的なアプローチの方法を教わりました。丸暗記型の勉強は辛いだけですが、こうした思考を巡らす勉強は楽しく、歴史が好きになり、今でも趣味にしているほどです。
経済政策がその後の明暗を分けることに興味を持ち、経済学を専攻
・・東大文Ⅱを志望した理由は何ですか。
よく聞かれる質問ですが、明確な志望動機はありません。東大の友人たちの多くもそうでした。企業経営者などにインタビューすると、あたかも青雲の志を抱いていたかのように語る人もいますが、記憶は再構成されるもので、後付けの理由ではないかと疑っています(笑)。ですから、皆さんにも無理に志望動機を明確にしようと考える必要はないとアドバイスしたいですね。
文Ⅱに進み、経済学を専攻したのは、世界史の受験勉強で1920年代の世界の動きに興味を持っていたことが影響しています。黄金期から世界大恐慌に突入したとき、経済政策に成功したイギリス、アメリカと、失敗したドイツ、イタリアで、その後の明暗が大きく分かれました。世界情勢をも左右する経済というものを学んでみたいと考えたのです。
思考のパターンを体に染み込ませよう
・・河合塾で学んだことが、その後の人生に役立っていることはありますか。
受験勉強で最も大切なのは、思考のパターンを身につけることです。「自由に考えろ」といわれるのが一番困ることで、それが可能なのはごく限られた天才だけです。思考のパターンを持っていなければ、逆に異常なほどの暗記量が必要になり、挫折につながりかねません。河合塾では、先ほどの日本史、世界史のように、どのようなプロセスで考えていけばいいのかを徹底的に教わりました。ただし、やり方がわかっただけでは簡単に身につくものでもありません。武道の型と同じで、実際に何十回もトレーニングを重ねることで、ようやく脳が自然と反応するようになるのです。受験勉強でこの思考のパターンを体に染み込ませておけば、大学入学後、あるいは社会人になったときに、状況に直面しただけで自動的に思考パターンが発動されるようになります。もちろん、受験勉強で養われる思考パターンはまだ初級編です。入試問題は明確に定義された典型問題だからです。大学ではもう少し定義が曖昧な問題に取り組みますし、社会ではもっと複雑な要素が絡み合ってきます。それでも、まったくフリーの状態では考える糸口を見つけることもできませんが、典型問題に対する思考パターンを持っていれば、結論の大まかな輪郭を描くことができます。うまくいかない場合は少しアレンジしたり、より細かい部分を検討したりといった工夫を加えることもできるようになるのです。人生においてはあらゆる局面で問題解決を迫られます。受験勉強でその第一歩を踏み出してほしいと思います。
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飯田 泰之(Yasuyuki Iida)
1975年東京都生まれ。海城高校在学中、河合塾池袋校の高校グリーンコースに通う。1994年東京大学文科ニ類に現役合格。在学中には池袋校高校グリーンコースチューターとしても活動した。2003年東京大学大学院経済学部研究科博士課程を満期退学し、駒澤大学専任講師に就任。現在は、明治大学政治経済学部准教授を務める。専門はマクロ経済学・経済政策。内閣府規制改革推進会議委員として、労働市場改革や農業の6次産業化などにも取り組んでいる。
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