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「私と河合塾」-OB・OGが語る河合塾-: Vol.108 (2019年7月1日公開)

  • 会社経営・起業家
  • デザイン・アート関連
  • 河合塾美術研究所
REBIRTH代表 沓名 美和さん

寝食を忘れて粘り強く頑張ること<br />最後までやり切ることの大切さを<br />美術研究所で学ぶことができました。

  • REBIRTH(現代美術artist・ジュエリー制作販売・キュレーター)
    代表

    沓名 美和さん

    出身コース
    河合塾美術研究所

集中力が身につき、どんなに描いても疲れない「ゾーン」を体験できた

・・・河合塾美術研究所で学んで、いちばん良かったことは何ですか。

沓名 美和さん

 作品に向かう集中力を身につけることができたことです。美術を学びたくて高1から河合塾美術研究所の名古屋校に通い始めました。しかし、現役合格が勝ち取れなかったため、第一志望の多摩美術大学合格をめざし、同東京校で浪人時代を過ごしました。一日中、デッサンや水彩画を描く日々でしたが、指導熱心な先生方のおかげもあって、受験直前期には、自信を持つことができました。朝から晩までいつまでも描いていられそうな感覚、スポーツ選手の言う「ゾーン」に入ったような感覚を味わいました。粘り強く頑張ることの大切さを教えてもらえたと思っています。先生から「感覚的ではなく、描くことができる人になったね」と言われた時は、本当にうれしく思いました。受験校のほぼすべてに合格し、念願の多摩美術大学に入学することができました。

画廊と組んで美術のハードルを下げるプロジェクトを企画

・・・多摩美術大学時代には、どんな活動に力を入れたのですか。

 美術は新しいものを生み出すことだと信じておりました。たとえば、銀座の画廊と組んで、学生の制作した作品を東急ハンズで販売するといった、生活の中にアートを入れるプロジェクトを進めました。また、中沢新一先生の文化人類学の授業に最も影響を受け、自分のルーツに関心を持ったことから、アジアに興味を惹かれるようになり、4年次に3カ月ほど交換留学で韓国の弘益大学校で東洋画を学ぶことになりました。

韓国で修士号を取得し、中国の大学院の博士課程へ進んだ

・・・韓国での生活はいかがでしたか。

沓名 美和さん

 韓国に留学して「アジアがおもしろい」と思いましたね。交換留学期間が終わるころ、多摩美術大学の先生に「このまま韓国に留まり、大学院に行きたいので、卒業制作はこちらでつくります」と伝えたところ、かなり叱られましたが、認めてもらうことができました。韓国語を猛勉強し大学院に進学しました。大学院時代には、日本のアーティストを呼んで展覧会を開く活動も続けていました。大学院終了後、美術展を企画するようなプロジェクト活動をしながら、中国語の勉強を始めました。アジアの美術を勉強するなら中国にも行きたいと思ったからです。その後、中国政府の奨学金を受給することができ、中国のトップ美大ともいえる中央美術学院の博士課程に進学することになりました。

刺激的な仲間に囲まれ、新しいものを生み出す時間を共有できた

・・・中国の大学院ではどんなことを学んだのですか。

 中央美術学院の実験芸術学科では、建築や映画、美術などさまざまな分野の出身者が集まり、みんなで同じ本を読み、ディスカッションして互い刺激し合い、新しいものを生み出そうとしていました。本当に充実した時間を過ごすことができました。そして清華大学の彫刻学科で現代美術史公共芸術を学ぶため博士課程に入学し猛勉強を続けて、2019年になってようやく博士論文が通る見込みとなりました。

薬きょうをアートに変えるREBIRTHプロジェクトを立ち上げた

・・・薬きょうを使ったアート作品の制作・販売を始めた経緯を教えてください。

沓名 美和さん

平和を考えるきっかけにしてもらいたいと薬きょうからジュエリーを制作

 アジアのアートに触れたいと各地を旅行したとき、カンボジアで地面に落ちていた薬きょうを拾い、戦争の記憶を平和につながるかたちで伝えられないかとアート作品を作り始めました。やがて、アート作品ではなく、気軽に身につけてもらえるようなジュエリーブランドREBIRTHを立ち上げました。ボランティアで教えているカンボジアの子どもたちの絵をモチーフしたジュエリーもあり、カンボジアの若者や子どもたちがアートに関わる場づくりとなるプロジェクトです。現地の若者に金属加工の技術やデザインの方法を伝えて製品化することで、雇用や学費充当などの成果を上げています。一方で、日本の御神輿の飾り金具職人さんの協力を得ながら、カンボジアの若者の金属加工技術を活かせる道を模索しています。

日中韓をつなぎ、アジア全体の美術への認識を高めたい

・・・今後の活動についての抱負をお願いします。

 日中韓で美術を学び、研究してきた経験から、いずれは大学の専任教員として教鞭をとりたいと考えています。REBIRTHの活動も発展させ、日本のアーティストをアジアに紹介していく活動も精力的に行っていきたいと考えています。美術に限らず、アジア人が共有している価値観や文化に関わるスケールの大きな活動に携わっていきたいと思っています。

  • 沓名 美和さん

    キュレーターとして日本と中国の新たな文化交流の力になっていくことを願い音楽交流会を企画する

  • 沓名 美和さん

    「北京文化交流音楽会」を北京日本大使館で開催し、約120名の青少年が参加

  • 沓名 美和さん

    北京文化交流音楽会のプログラムは、碓井さんのピアノと朱さんのダンス

Profile

沓名 美和さん

沓名 美和(Miwa Kutsuna)

1982年愛知県生まれ。安城学園高等学校在学中、河合塾美術研究所名古屋校で美術の基礎を学ぶ。高校卒業後、同東京校で日本画を学ぶ。2003年多摩美術大学(工芸学科)入学。2007年韓国弘益大学校の大学院で東洋画を学び、修士課程卒業。中国政府の奨学生として中央美術学院で学び、清華大学大学院博士研究員として現代美術史公共芸術を学ぶ。2013年REBIRTHを起業し、薬きょうという戦争の負の遺産を平和につながるジュエリーの制作・販売を行なう。現在、北京清華大学にて日本文化、デッサンなどを教える。朝日新聞・中日新聞・中国のメディアなどで活動が紹介される。国内外でキュレーターとして国際交流イベント等の運営や国内外の大学で特別授業や講演会を行う。

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