京都新聞・神戸新聞・産経新聞に河合塾によるコラム連載(第19回)
2022年11月10日
京都新聞、神戸新聞と産経新聞に、一昨年から導入された共通テスト傾向分析のほか、京都大・大阪大・神戸大など関西の難関大受験をテーマとしたコラムの連載しています。本連載では、河合塾近畿地区の講師やスタッフが大学受験に役立つ情報をお届けします。
今回ご紹介する第19回目は、河合塾・近畿地区医学科進学情報センター長 山口和彦が、河合塾の「第2回全統共通テスト模試」の結果から、2023年度の入試予想をしてみました。
23年度の志望動向を読み取る~難関大集中 医薬志向高く~

2022年8月、河合塾の模試の中でも33万人の最大受験者数を誇る「第2回全統共通テスト模試」が実施され、全国の大学受験生の志望動向が判明した。そこから大まかに2023年度の入試予想をしてみよう。
まず、今年の受験生が「高校入学以来の純粋コロナ学年」であることに注目しておきたい。前年までの受験生が、すでに一定の進路選択の途上でコロナ禍になったことに比べ、この学年の生徒は高1の入学以降、「文理選択」をはじめ、コロナ禍の社会で純粋に進路を選択してきた。今回の模試は、彼らの純粋な社会情勢への考え方を反映した結果だといえるだろう。
今回の模試の志望者増の大学に注目すると、東京大、京都大、九州大などの難関大学が他の大学より増加していることが特徴的だ。また、文理別に見ると、志望者は「文系学部」より「理系学部」の方がやや増となっている。
国公立大前期試験の志望者は、前年から103%とやや増加している。その上で志望者の学部別増加率を見ると、圧倒的に「医学科」(志望者前年比118%)と「薬学部」(同114%)の増加率が高い。一方で同じ医療系ながら、看護学部(同103%)は 国公立大志望者の全体と同程度、医療技術系(同98%)は減少傾向になっており、同じ医療系といえども偏りがある。ここ3年のコロナ禍で一部の資格志向に直結する学部に人気が集まっている様子が見られる。
他の理系系統では「獣医学科」(同119%)の増加率が突出している。「農学部」のその他学科(同106%)でもやや高めだ。それに比べ、理系で最大定員を抱える「工学部」志望者(同101%)は伸び率が低い。理系生は時代に応じた資格志向に反応しているように思われる。
同様に文系学部を見ると、「法学部」(同106%)と「経済系学部」(同105%)は文系学部の中ではやや高めの増加率だが、理系の「医学科」ほど突出した志望者増の学部はない。「文・人文」や「社会・国際」系学部などは、前年比97〜98%程度と大幅に志望者を減少させている。
一方、私立大の志望者数(一般選抜)は、国公立大に比べて(同98%)と全体的に減少している。それでも学部系統別の志望者の「増減傾向」は国公立大と同様で、「医学科」(同110%)と「薬学部」(同105%)が高く、看護学部(同96%)と医療技術系(同91%)が減少している。農学部も「獣医」(同125%)だけが高く、その他系統(同103%)と格差がある。他方、文系学部では「法学部」(同103%)と経済系学部(同101%)が前年以上をキープしているものの、文・人文系学部と社会・国際系学部は93〜94%と国公立大以上の減少傾向となっている。
そこから見える次年度入試のキーワードは、「難関大学への集中」「医学部(医学科)志向」「薬学部志向」というトレンドだ。18歳人口は減少傾向だが、志望大学・学部によっては前年以上の激戦が予想される。受験生は怠りない学習で、「トレンドに合わせた成果を出すこと」が期待されているといえるだろう。
執筆者のプロフィール

▶河合塾近畿地区医学科進学情報センター長 山口和彦(やまぐち・かずひこ)
河合塾入職後、長年第一線で受験生の指導を行う。医学科志望者だけでなく、東大・京大志望から私立大志望まで幅広い生徒を担当。指導した生徒は延べ3,000人を超える。2016年から近畿地区医学科進学情報センター長として、近畿地区の全校舎の医学科受験指導を統括。河合塾を代表する医学科受験指導のプロフェッショナル。